タイトル『キリキンにおいでっ♪』Ver.4     登場人物 仁村初美(16)海鳴高校2年生 経堂渉(ワタル)(16)同 檜山かりん(16)同、初美の友人 新橋圭吾(16)同、ワタルの友人     あらすじ 好きな人(ワタル)の関心をひくきっかけに しようと、ワタルの好きな本を持って話しか けてみるが、その本のファンと思われてしま う。ゼンゼン趣味じゃない初美は結局ケンカ 別れのようなカタチに。これで初美の恋は終 わってしまうのか?     本文 ○海鳴高校・外観    ○海鳴高校・教室前の廊下(朝)   もじもじする足下。目の下にクマができ   ている仁村初美(16)が本を抱えて立って   いる。檜山かりん(16)が横にいて、心配   そう。 かりん「初美ィ……アンタ死にそうな顔だよ」 初美「(緊張したまま)ダイジョブです。計  画は万全です」   初美、本を持ち直し、 初美「これできっかけ作るっすよ!」 かりん「(メンドウそうに)そう言ってもう  一週間になるんだけど」 初美「カリカリかりん……」 かりん「(ムッとして)とにかく早く行け」 初美「薄情だ……」 かりん「さっさと行けーっ!!」   初美を蹴り飛ばすかりん。    ○同・教室・中(朝)   ヨタヨタと入ってくる初美。   その目にはすぐ経堂渉(ワタル)(16)の   姿が入ってくる。   真っ赤になる初美。 初美「落ち着かなきゃ……(ハッ)そうだ、  コーヒーでも」   背後にかりんがコワイ顔で立っている。 かりん「ええかげんいせいや……」 初美「す、すいませんっ、行きますっ!」   × × ×   机でノートなど見てるワタル。   そこへ初美、来る。 初美「あ、あああ、あのさ」 ワタル「?」 初美「こここコレ……」   とワタルに本を見せる。   タイトルには『キリング・キングダム(   6・豪華版)星野慧太』。   表紙に穴が開いて中表紙が見えるなど凝っ   た作り。 ワタル「え? それは……!」 初美「へへ、ネットで……」 圭吾「ほほう、やりますなあ」   いつの間にか背後に新橋圭吾(16)。   初美の本を取る。 初美「あ」 圭吾「限定500のレアもの(目がギラリ)」 ワタル「俺たち以外にもいたんだな(目がギ  ラリ)」 初美「へ?(笑顔のまま固まっている)」   ワタルと圭吾、それぞれ同じ本を取り出   す。 圭吾「星野慧太センセイこそ」 ワタル「今最高のファンタジー作家!!」   呆気に取られる初美。   ワタルと圭吾、初美に向かい、 ワタルと圭吾「同士!!(さらに目がギラッ  と)」 初美M「〜〜〜〜〜?!」    ○とある喫茶店・外観 ※「ドトール」みたいなタイプ。    ○同・中(外からも見える席で)   かりん、アイスコーヒーのストローを回   しながら、 かりん「……で、今度その何だっけ?」   かりんの横に座っている初美。 初美「キリキン・オンリー・イベント……」   × × ×   (フラッシュ) ワタル「(笑顔さわやかに)仁村さんも行こ  うよ♪」   × × × かりん「行くの、それ?」 初美「でも、あたし本も読んだこともないし  ……」 かりん「じゃあ行かないんだ」 初美「そんなこと言ってないでしょ!」 かりん「でもアレだよぉ、そういうトコって  マニアっていうかオタ……」 初美「ワタル君はちがうよっ!! (小声で)  きっと……」 かりん「そうかねえ〜」   とコーヒーを吸うかりん。 かりん「だったら行くしかないんじゃないの?   せっかくのお誘いでしょ」 初美「他人事だと思って……」   かりん、初美の首元を締め上げる。 かりん「どうすんのよ……(怒)」 初美「行きますっ! 行かせてくださいっ!」   やや引いてる周囲の客たち。    ○(イベント当日)イベント会場・外観   人がごったがえしている。   魔女や兵士のコスプレしてる参加者もい   る。    ○同・入り口付近   初美がオロオロした風情で立っている。 初美「ここでいいんだよね……」   入り口方向を見やると『第13回 キリ   キン・オンリーイベント会場』という立   看板。 圭吾の声「ようっ!!」   振り向くと圭吾とワタル。   圭吾は大きめの袋に王冠のような帽子。   ワタルはリュックサックに片目だけの   サングラス。   二人とも若干恍惚した表情。 圭吾とワタル「では、いざ行かん」   初美、二人に引っ張られる。 初美「ひっ!」   そのままどんどん引きずられていく初美。 初美「あぁぁぁ〜……」    ○同・中   ワタルたちに引っ張りまわされる初美の   カットいくつか。   × × ×   疲れ果ててへたり込んでいる初美。 初美「……」   そこへワタルが缶ジュースを持ってやっ   て来る。笑顔。   初美の横に座って、缶ジュースを差し出   しながら、 ワタル「圭吾のヤツはすぐ戻ってくるってさ  ♪」 初美「もういい……」 ワタル「え?」 初美「こんなのくだらない! 帰る!」   うなだれたまま立ち上がる初美。 ワタル「仁村さん?」 初美「帰るったら帰るぅぅぅっ!」   走り去る初美。   呆然とするワタル。 圭吾「(戻ってきて)お、ジュースっすか♪」   ジュースに手を伸ばすが、その手をよけ   るワタル。 ワタル「仁村さん……」 圭吾「??」    ○街角   一人でぽつんとたたずむ初美。   ケータイを取り出し、かりんにかける。 かりんの声「はいはいー、初美ィ?」 初美「……」    ○とあるカラオケBOX・中   かりんがケータイでしゃべっているが、   後ろでは友達が歌ってる。 かりん「ゴメン、ゴメン、今ちょっとさあ」    ○街角   ケータイを切る初美。    ○カラオケBOX かりん「初美? ありゃ? もう……」    ○街角   ケータイをたたむ初美。   うつむき、涙が一筋流れる。 初美「わけワカンナイ」    ○(次の日)海鳴高校・外観(朝)    ○同、下駄箱付近(朝)   うつむいたままの初美と困った表情のか   りんが歩いてくる。 かりん「元気だしなってー」 初美「……」   かりん、ため息。    ○同、廊下(朝)   初美たちの前から圭吾が歩いてくる。   ぎこちなく手を上げる圭吾。 圭吾「よう〜……」   返事もせず通り過ぎる初美。   参ったなあという表情でアタマをかいて   いる圭吾。   × × × 初美「(ふと立ち止まって)謝ってくる……」 かりん「は?」 初美「今から謝ってくるーっ!」   うつむいたまま走り出す初美。 かりん「ちょ、ちょっと待ちなってーっ!」   初美を追いかけるかりん。 ○同、初美たちの教室・中(朝)   かりんに捕まえられているカタチで入っ   てくる。 かりん「授業前だから昼休みにしな。ね?」   やや涙目の初美、むくれている。 かりん「あれ……? 初美! ほらほら!」 初美「アンタは気楽だよ……」   かりん、初美の顔を強引に向きなおさせ   る。 かりん「ね!」   初美の視線の向こうにワタルの姿。 初美「?!」 かりん「(初美の耳元で)初美の席にいるよ!」   初美、慌てて逃げようとするが、かりん   が首根っこを掴んで放さない。   ワタル、近づいてくる。   観念した風の初美を放すかりん。 かりん「ほい」   目は合わせないが向き合うワタルと初美。 ワタル「昨日はいきなりゴメン」 初美「……」 ワタル「仁村さんのこと、誘えてウレシかっ  たんだ、ホント」 初美「!」 ワタル「でもやっぱ会場に来ちゃうと舞い上  がって……だから、ゴメン!」   アタマを下げるワタル。   初美の口元にわずかに笑みが戻る。 初美「そんな……」   二人、いい雰囲気。 かりんM「何だかなあ〜(苦笑)」 ワタル「これ、プレゼントなんだけど」   ワタル、本を差し出す。 初美「(顔を上げて)え?」   初美、シアワセそうな表情手に取る。   が、そのまま固まる。   かりんが後ろから覗き見る。   本のタイトルは『あのキリキン・シリー   ズが3日で分かる!<決定版>』。   愕然とする初美と半分コケるかりん。 ワタル「是非読んでみてよ。スゴクいい本だ  から」 初美「……そうなんだ……」 ワタル「今度はゆっくり回ろうね!」   と手を振りながら去っていくワタル。 初美「(うつろな表情で)はいー……」   後ろのほうでアタマが痛いという態のか   りん。      −終わり−