タイトル『カレはステキな跡継ぎ!?』 <登場人物> 佐々良加奈子(15) 三ヶ月孝太(15)忍術マニア、小説家志望 佐々良光雲(67)佐々良流忍術 佐々良絹代(64)光雲の妻 <本文> ○佐々良家(朝)   廊下で音もなく素早く加奈子を追う光雲。 光雲「さあ朝の鍛練を始めるぞお!」   やはり音もなく逃げる加奈子。登校スタ   イル。 加奈子「しつこいんだから! あたしはクラ  ブ活動!」 光雲「ふん! 朝っぱらから倶楽部活動など  くだらん!」   玄関でクツを履く隙に、ササッと門の前   に立ちはだかる光雲。 光雲「ふふふ、わしを越えられるかな?」   別の場所から外に出ていく加奈子の姿。 光雲「ぬぬっ、卑怯な!」   いつの間にか背後に絹代。 絹代「あなたもよくああやって夜遊びに出て  行ったものよねえ」 光雲「……(汗)」    ○学校・教室内   休み時間でざわついてる。   その中で本を読んでいる三ヶ月。   加奈子、照れながらも話し掛ける。 加奈子「み、三ヶ月クンっていつも本読んで  るよね」 三ヶ月「そうでもないよ」 加奈子「えっと……何の本読んでるの?」 三ヶ月「……」 加奈子「(あ、あれ? わたし何かマズイこ  と言ったかしらららら)(混乱)」 三ヶ月「実はそのことで少し聞きたいことが」 加奈子「へ?」    ○佐々良家・縁側   腰掛けて空を見上げている加奈子。 ため息。「はぁぁ〜」    ○学校の屋上(回想) 三ヶ月「佐々良さんトコって、その……」 加奈子「(ドキドキ)」 三ヶ月「忍者屋敷だよね!」 加奈子「えっ……」 三ヶ月「僕、忍術について知りたいんだよ!  (輝く顔)」 手には「実録・忍法の歴史」というタイトル  の本。   フクザツな表情で固まる加奈子。    ○佐々良家・縁側(現実に戻って) 加奈子「これって喜ばしいことかなあ……」   加奈子が三ヶ月に忍術について教えてる   イメージ。(微笑ましい光景……)   しかし、すぐ醒めて、 加奈子「できるわけねえー!!」   裏山にコダマする加奈子の声……。   ×  ×  ×   気を落ち着けていると、三ヶ月と光雲が   やって来る。 加奈子「三ヶ月クン?!」 三ヶ月「やあ」 加奈子「何で……?!」と光雲を睨む加奈子。 光雲「(ニヤッとして)茶屋で意気投合して  のう」   ×  ×  ×   3人でお茶を飲みながら、 三ヶ月「何で教えてくれなかったんだい?」 加奈子「そ、それは……」 光雲「さ、まず我が忍術の由来などから紹介  しようかのう」   と歩き出す光雲。 三ヶ月「是非お願いします」   すぐ後を付いて行く三ヶ月。   取り残されたカタチの加奈子。 加奈子「(このままじゃ三ヶ月クンの人生が  危ない!!)」    ○佐々良家・居間(夜)   光雲に詰め寄る加奈子。 加奈子「三ヶ月クンにヘンなこと吹き込まな  いでよ!」 光雲「何のことかのう〜」 加奈子「おじいちゃん!」   光雲を睨み付ける加奈子。 光雲「代わりの跡継でもいればのう……」 加奈子「じゃあ探してくるわよ!!」    ○駅前(朝) ※休日なので私服姿 加奈子「おねがいしまーす!」   ビラを配る加奈子。   誰も受け取らない様子。 手には自作のチラシ「佐々良忍術、生徒募集  ♪」。 加奈子「はぁぁ……ダメだなあ」   と、手が伸びて来て、 男性の声「もらえます?」   加奈子うれしくて、 加奈子「あ(はーと)」   手を差し出したのは笑顔の三日月。   ひっくり返る加奈子。 三ヶ月「あれ?」    ○佐々良家・加奈子の部屋 加奈子「今はベンリなものがあるのよ!」   パソコンを操作している加奈子。   画面を見て目が輝く。 加奈子「来てる!」 メール画面に「忍術資料請求依頼」のタイト  ル。 メールの中身に「氏名:三ヶ月孝太」の文字。 加奈子「うあああー!!!」   アタマをかきむしる加奈子。    ○学校・教室内   忍術の本を読んでいる三ヶ月。 加奈子「三ヶ月クン……」 三ヶ月「あ、佐々良さん……」   目が据わってる加奈子の姿にやや引く三ヶ   月。    ○同・廊下 三ヶ月「何?」 加奈子「(小声で)……もう来ないで」 三ヶ月「え?」 加奈子「もう、ウチに来ないで!」 三ヶ月「……何で?」 加奈子「おじいちゃんは弟子が欲しくてしょ  うがないのよ! それも跡継ぎになるよう  な……」 三ヶ月「ははは、それもいいかな♪」   バシッ!   加奈子、三ヶ月をはたく。   少し涙。   そして走って行く。    ○帰り道   歩きながら手のひらを見つめる加奈子。 加奈子「ひっぱたくことなかったのに……」    ○佐々良家・居間(夜)   無言で食事の加奈子。 絹代「どうしたの?」 加奈子「何でもない」 光雲「フラれたんかのう〜♪」   かっかと笑う光雲。   ギロリと睨む加奈子。   ハッとする光雲。 加奈子「ごちそうさま」   ムッツリしたまま出て行く加奈子。 光雲「ま、マズかったかのう?」 絹代「あなたの口は災いの元ですわねえ、い  つも」 光雲「……(汗)」    ○同・加奈子の部屋(夜)   机のライトだけが点いている。   パジャマ姿で机に頬杖をついている加奈   子。 加奈子「……」   そして額を机に落とす。 加奈子「はぁ……」    ○朝の街の光景    ○佐々良家・廊下(朝)   追ってくる光雲。 光雲「さあさあ特訓じゃあ〜!」   ブスッとした表情で逃げる加奈子。目の   下にクマ。 光雲「気晴らしになるぞお?」   ピタッと止まる加奈子。   またヘンなことを口にしたのかと焦る光   雲。 加奈子「三ヶ月クン……」   玄関のところに三ヶ月の姿(苦笑い)。 光雲「おお、ついにやる気になってくれたの  か?!」   喜んで近寄っていく光雲。   加奈子ショック。 三ヶ月「やっぱ止めときます」   コケる光雲。 三ヶ月「佐々良さん、これ……」   ノートを手渡す三ヶ月。 表紙には「忍術秘史・水面の舞(仮)」とあ  る。 加奈子「……?」 三ヶ月「(やや照れながら)僕の書いてる小  説」 加奈子「じゃあ……」 三ヶ月「うん(笑顔)」 光雲「わしを騙したのか!」 三ヶ月「いえ、ただお話をお聞きしたいと…  …取材というか」 光雲「それだけ?」 三ヶ月「です」 光雲「あー、朝から不機嫌じゃ、わし!」   足音鳴らして家の奥へ引っ込んで行く光   雲。   二人、苦笑。    ○登校途中の道(朝) 三ヶ月「あ、あとさ」 加奈子「ん?」 三ヶ月「今度ちょっとしたイベントがあるん  だけど……行かない?」 加奈子「……」   少し歩いてから、 加奈子「この前たたいちゃったし、付き合っ  てもいいけど」 三ヶ月「じゃ、チケット」 加奈子「えへへ、何のイベントかなあ……!?」   みるみる険悪な表情になっていく加奈子。   バチーン!   吹っ飛ぶ三ヶ月。   チケットが舞う。 そこには「第23回くのいちコンテスト♪」。 (女の子のキャラが描いてあって「来てね(  はーと)」とセリフが。       −おわり− <補足など> 加奈子の両親は父の仕事の関係で他の地方で暮らしています。